Compiled
Fragments on NY Entertainment 2000-2002
2002.05.
橋本努
ニューヨークで私が驚嘆したこと、楽しんだこと、興味深いと思ったことを、断片的に記しておきたい。これからニューヨークを歩く人のために、ちょっとした情報にでもなれば幸いである。
「イサム・ノグチ美術館」 クイーンズにあるこの美術館は、彫刻家ノグチの独創的な才能を知るためにも、また、彼の芸術がいかにニューヨークで受容されたのかを知るためにも、大いに学ぶところがある。才能に満ちた芸術家である。www.noguchi.org
「自然史博物館」 民族文化、恐竜・動物、魚や植物、そして宇宙に関するものを集めた博物館。子供向けに展示されたものが多いとはいえ、恐竜といい動物の剥製といい、どれも驚くべき展示であった。ニューヨークの子供たちは恵まれていると思った。大画面のシアターでは、いくつかのフィルムを見たが、南極探検中に遭難して帰還するという実話に基づく映画が印象的であった。
「ニューヨーク・シティ・バレエ」 クリスマスの季節に「くるみ割り人形」をみた。ドイツの新興階級が生み出したロマンチックな家庭生活というところか。
「ジャパン・ソサエティ」 映画、演劇、美術など、日本の芸術をニューヨークの人々に知ってもらうための交流館。さまざまな催し物があるのでぜひ訪れたい。解体社の脱構築的な演劇を見た。映画では、「人間蒸発」(1967)、「めし」(1951)、「人情紙風船」(1937)、「甘い汗」(1964)など、どれも傑作だった。www.japansociety.org
「ダンスペース・プロジェクト」(Danspace
Project) ニューヨークにダンサーとして留学したケイ・タケイの一人パフォーマンスを教会でみた。現世離れした演技だった。
「ニューヨーク・オペラ」 リンカーン・センターにおける最大のイベントであるオペラ。リゴレットをみた。英語の字幕が各席に設置されていて、ストーリーを楽しむことができた。イタリア悲劇のなかに吸い込まれていくようだった。オペラに嵌まってしまう人々の気持ちが分かる。
「アジア太平洋アメリカ文化祭り」(Asian
Pacific American Heritage Festival) 毎年春に、ユニオン・スクエアで催されるアジア系のお祭り。二年続けて行った。中国の出し物が最高だった。2002年には僧太鼓も参加した。
「ジャズ・フェスティバル」 シティ・ホールで三日間連続のジャズ・フリー・コンサートが毎年夏に開かれる。J&Rという近所の電器屋の主催だ。ダイアン・リーブズの歌を、聴衆の黒人たちといっしょに聴いて、いっしょに涙を流してしまった。いまでものどが痛くなるほど感傷的になる。www.jazzfest2001.com
「ブラスト」(Blast) ブロードウェイのミュージカルで、アメリカの高校生や大学生のブラスバンド・チームをエンターテイメント化したもの。まったく期待していなかったのだが、最高に感動してしまった。音楽的にもパフォーマンスとしても完ぺきであった。現在私が最も評価するミュージカル。テロ事件後に終了した。ミュージカルといえば、この他に、「ロッキー・ホラー・ショウ」、「シカゴ」、「フォッシー」、「ユーリン・タウン」などを見た。どれもよかった。「シカゴ」は、アメリカのユダヤ的人生観と資本主義の関係を知る上で考えさせられた。こういうミュージカル文化を素材にしてアメリカ社会を考えることはとても重要であると思う。
「リンカーン・センター・アウト・オブ・ドアーズ」 リンカーン・センターの広場で開かれるフリー・コンサートのお祭り。テロ事件の二週間前に見に行った。ラテン・アメリカ系やアフリカ系を中心にさまざまなミュージシャンが演奏した。Tracie Morris というHip-Hop系のリリックな詩人(ブルックリンの音楽大学に通う学生)の歌がよかった。Vieux Diopという西アフリカ出身のシンガーの歌も印象的だった。www.lincolncenter.org
「リンカーン・センター・アヴェリー・フィッシャー・ホール」(Avery Fisher
Hall) 主としてクラシックのコンサートを催す会場。ここでロンドン・シンフォニー・オーケストラによるショスタコーヴィッチの交響曲を聴いた。コンサートの前にショスタコーヴィッチ研究者の講演もあった。演奏はとてもよくて、満ち足りた気分になった。ショスタコーヴィッチの音楽は、もっと発見されてしかるべきだ。それ以来私は、ショスタコにはまっている。
「チベット・フェア」 ウェスト・ビレッジにある小学校を日曜日に開放して、チベット関係の文化祭をやっていた。チベットから来た僧侶たちによるパフォーマンスには、とても感動した。低い声の出し方が怪しい密教の空間を醸し出していた。政治的には中国からチベットを解放することが目的であるという。中国による迫害の歴史を知る機会にもなった。www.tibetanliberation.org
「最近の音楽のアーカイブ」(Archive of
Contemporary Music) ロウアー・マンハッタン(54 White Street)にある怪しいCDショップ。試聴版や売れ残りを格安で売っているが、店の雰囲気が雑然としていて、なんともいえない味わいがある。矢野顕子とサムルノリを買って帰った。www.arcmusic.com
「アザー・ミュージック」(Other Music) 略してOM。ニューヨーク大学の近くにある怪しいCDショップ。レアもの、デカダンス、古い録音、想像がつかないもの、オタク系のロックやポップス、等など、とにかく変なものばかり陳列してあって、店の中がかび臭く匂う。コンピューター音楽の中古CDがいろいろあったので、ジャケットが気に入ったものを3枚買ったら、そのうち二枚は当たりだった。タワー・レコードの向かいにある。ブリーカー・ストリート(Bleeker St.)とラファイエット・アベニュー(Laffayett Ave.)の交差点近く。www.othermusic.com
「アメリカ先住民博物館」 (National Museum
of the American Indian) ロウアー・マンハッタンにある大きな博物館。アメリカの歴史を知る上で重要な場所だ。装飾的な衣装は必見の価値あり。
「グッゲンハイム美術館」 現代美術を知る上で最も重要な美術館の一つ。金曜日の6:00-8:00pmは、$1で入場できる。フランク・ゲーリーの建築展をみた。www.guggenheimm.org
「モマ」(MoMA) ニューヨークの現代美術館(The Museum of
Modern Art)のこと。改装中で展示が少なく、名画といわれるものが所狭しと飾られていた。これほど名画を閉じ込めると、見る方もばかばかしくなる。六年前にこの美術館を訪れたときの感動はなかった。
「ホウィットニー美術館」(Whitney Museum) ニューヨークを代表する現代美術館。グッケンハイムと同様に金曜日の夜が安い。行ってみたら、昔のアヴァンギャルドなアメリカ映画の上映会があって、感性豊かな年配の聴衆たちが昔を謳歌しているようだった。たしかに実験的ですばらしかった。www.whitney.org
「クーパー・ヒューイット国立デザイン美術館」 ここは建物の建築デザインを見るだけでも価値がある。展示物はバラバラで、他の美術館にはないようなものが堂々と展示されていて新鮮だった。www.si.edu/ndm
「バリオ美術館」(El Museo del
Barrio) イースト・ハーレムにおけるヒスパニック系の文化を代表する美術館。ラテン・アメリカ系の有名な絵画が多かった。美術館の向かいにはセントラル・パーク内の特別な西洋式庭園があって、こちらもお勧め。www.elmuseo.org
「ジューイッシュ美術館」 古代ユダヤの博物からホロコーストにいたるまで、ユダヤ系の文化の歴史をいろいろ知ることができる。繊細で日常感覚にあふれ、それでいて深い宗教文化を背後に感じさせてくれる。ユダヤ文化がもつ恐るべき歴史とその力について、さらに理解したいと感じさせてくれるところだった。www.thejewishmyseum.org
「ノイエ・ギャラリー」(Neue Galerie) クリムトやシーレの作品を中心に、オーストリア、とりわけウィーンの文化を展示する美術館。新しくオープンしたばかり。20世紀ウィーンの文化は、不健康的で異常な性愛にもとづく芸術というものを文化の中心に据えているような気がした。シーレの作品はどれも逸品であった。www.neuegalerie.org
「アフリカ美術館」(Museum for
African Art) 洗練された現代アフリカ芸術を紹介する美術館。ソーホーにある。DVDを使ってアフリカ現地のお祭りの様子を放映していた。www.africanart.org
「クロイスター美術館」 メトロポリタン美術館の別館で、マンハッタンの一番上あたりにある。建物、庭園、彫刻、美術など、すべてにおいてヨーロッパ中世の美術を展示してある。中世の人々は不健康で、病的な美的表現を神聖化しているようなところがある。マッチョなアメリカ人の文化とは対照的で移植だった。そこから見下ろすハドソン川もまた美しかった。ニューヨークで必ず訪れたい場所の一つ。
「ハーレム美術館」 黒人画家の作品を展示する美術館。アメリカの現代絵画における黒人の貢献を知る上で重要な場所であると同時に、ハーレム地域の再開発を象徴する場所でもある。
「ミュージアム・マイル」 フィフス・アベニューに並ぶ多くの美術館が無料に開放される日が六月に一日だけあって、いろいろと見て回った。この日は歩行者天国になって、ジャズ演奏もいくつか聴くことができる。二年続けていってしまった。www.urbanartspro.com
「インターナショナル・フィルム・フェスティバル」 55 East 59St.にある映画館で、アジア映画祭をやっていた。いろいろ見たが、黒沢清監督の「CURE」という映画に感性をくすぐられた。別の映画館では黒沢清特集をやっていて、「カリスマ」という環境ホラー映画を見た。こちらも自分の感性にぴったりであった。最近の日本には、こんなにすぐれた映画があったのか。www.asiancinevision.org
「ネイバーフッド・コンサート・シリーズ」(Neighborhood
Concert Series) カーネギー・ホールとシティ・グループが主催するフリー・コンサートのシリーズ。テロ事件が起きる三日前に、世界貿易センターのとなりにあるウィンター・ガーデンの広場では、知的感性あふれるジャズ・コンサートが開かれていた。www.carnegiehall.org
「フィルム・フォーラム」(Film Forum) マイナーで通な映画館。何度か通った。テロ事件前に見たイランの映画Djomehは、アフガニスタン移民の悲哀を描いていた。www.filmforum.com
「シネマ・ビレッジ」(Cinema Village) ユニオン・スクエアの近くにあるマイナーな映画館。アフガニスタンにおける戦争のドキュメンタリーフィルム「ジュング」などを見た。これほど生々しい映画を見たのは初めてだった。
「セントラル・パーク・サマー・ステージ」 セントラル・パークでは、夏は毎日のようにフリー・コンサートがあるので、できるだけ足を運んだ。ロック、クラシック、オペラなど。とりわけニューヨーク・シティ・オペラのステージは、ニューヨークの夏を過ごす最高のひとときであった。www.summerstage.org
「セントラル・パーク・バンドシェル」 フリー・コンサート用のステージで、年中いろいろなコンサートをやっている。インドのバージャン音楽の女性合唱がよかった。よかったのだが、どうもこのメンバーたちはあるインド人をグルとする宗教団体に所属しているらしい。日本から来た女性のメンバーとお話したが、世界的なネットワークがあって、コミュニケーションを楽しんでいるようだった。この他、アヴァンギャルド音楽のフェスティバルもあって、ひたすら疲れる経験をした。エリオット・シャープはよりいっそうキチガイになっている。
「ニューヨーク・フィルハーモニックのフリー・コンサート」 毎年夏に、ニューヨークのさまざまな場所で、ニューヨーク・フィルのフリー・コンサートがある。セントラル・パークではとても大きな広場を会場にして、夏の夜空のもとでクラシック演奏を楽しむことができた。「ニューヨークは世界で最も偉大な都市だ!」という主催者の挨拶に、なるほどそうかもしれないと実感できる夜だった。シュトラウス、ヴェイユ、ラベルを聴いた。www.newyorkphilharmonic.org
「オープン・シネ」(open cine) リトル・イタリーにある公園(マルベリーとスプリング・ストリートの交差する場所)で、夏の夜にイタリア映画の上映会があった。古い8mmの機材を使って壁に映し出された映画は、「シネマ・パラダイス」。周りの雰囲気と音楽がよくて、とても感傷的になってしまった。ニューヨークに暮らして本当によかったと思える夜だった。ソーホーのアパートまで、しみじみと歩いて帰宅したことを思い出す。こういう情報は、New York Press というフリー・ペーパーのNew York Press
Summer Guideという特集号に情報が載る。
「ニューヨーク本願寺」 (New York
Buddhist Church) 20世紀前半に立てられた豪華なマンションを改造して、仏教寺院として用いられている。住職の中垣さんとは飲む機会があって、いろいろ興味深いお話を聴くことができた。このマンションの地下には僧太鼓グループの練習場もある。ここではまた、佐渡から来た「鼓童(KODO)」のメンバーたちと飲んだ。彼らは最後に、北海道の漁師の歌を歌ってくれた。これはまったく衝撃的だった。日本の民衆音楽にはこれほどの力があったのか。また別の日には、おなじく日本の和太鼓のグループ「怒(Ikari)」のメンバーたちと飲んだ。部落被差別と闘う彼らは、大阪の浪速出身。翌日に彼らのコンサートを聴きに行ったが、これがまた感動的で泣いてしまった。
「ブルー・ノート」(Blue Note) ビレッジにあるジャズ・バーで、最も有名で最大規模のもの。ヴァレンタイン・デーの前日にカサンドラ・ウィルソンを聴きに行ったら、その演奏は翌日のニューヨーク・タイムズの記事で批評されていた。現在もっともホットな女性シンガーで、作曲家やアレンジャーの独創性が光っている。メロディーや展開にはつねに新しい発見があって、感性をくすぐられてしまう。
「ビレッジ・バンガード」 70年代系のジャズを二回聴きに行った。どちらもあまり有名ではないバンドであったが、レベルは高く、その真剣な演奏に熱狂した。
「ソス」(Thoth) 「ソス」と名乗るこの男は、私の知るかぎり、ニューヨークにおける最高のストリート・パフォーマーである。セントラル・パークの噴水の近くでよくパフォーマンスをしている。はじめて彼のヴァイオリン演奏とパフォーマンスを見たとき、完全に打ちのめされてしまった。それで彼の自作CDを買って帰ったら、それがまた独創的な物語になっていて、彼の芸術性にほとほと感心してしまった。それから約半年経つと、なんと彼のパフォーマンスは、有名な映画監督によってドキュメンタリー映画となっていた。その映画を見てさらに、感動を新たにした。ニューヨーク・ポストやニューヨーク・タイムズにも記事が載って、どうやらソスは、とても有名になり始めたようなのだ。日本にぜひ紹介したい。www.skthoth.com
「シンクロナイゼーション」 日本人のアーティストたちの集団で、ブルックリンのベッドフォードの倉庫街にあるスペースを利用して、さまざまな芸術活動を発信している。パフォーマンス、ファッション・ショー、ビジュアル・アート、展示など。サダさんが参加する「バニラマニア」というアーティストたちのグループも関わっている。www.synchronyc.com www.vanillamania.com
「ニューヨーク・シティ・ウォーク」 ニューヨークには町を徒歩で紹介するツアーがいろいろある。ちゃんとツアーガイドのライセンスというものがあって、町の歴史に詳しいガイドさんが特定の地域を約一時間半かけて説明してくれる。私はウェスト・ビレッジのツアーに参加してみたが、歴史を知りながら散歩することはいいものだ。www.newyorkcitywalks.com
「裁判所」 ロウアー・マンハッタンにあるいくつかの裁判所では聴講することができる。英会話のクラスのメンバーで聴講しに行ったが、とてもよい体験になったと思う。その裁判は、私が暮らしていたソーホーにおける最近の殺人事件を扱ったもので、ストリートでどのような殺人劇が繰り広げられたのかについて細かく検証していた。近所で起きた事件だったので、ちょっと怖い思いをした。www.courts.state.ny.us
「サーカス・アモック」(Circus Amok) ニューヨークで活躍する怪しいアマチュア・サーカス団。ビレッジにあるトンプキンス・スクエアでその公演を見たが、マニアックなバンド演奏とチープな舞台道具、そしてリーダーの存在感がよかった。なかなか珍しい経験であった。www.circusamok.org
「ワシントン・スクエア・アウトドア展示会」 主としてアマチュア画家たちの展示であるが、ワシントン・スクエアからユニオン・スクエアにかけて延々と展示が続くという大規模なものであった。アマチュアとはいえレベルは高く、それぞれ個性的で刺激を受けた。
「ストリート・フェア」 ニューヨークでは週末になると、常にどこかのストリートでお祭りをしている。最初は物珍しく見学してみたが、やがてこれはある組織が経営しているのだということに気づいて、関心がなくなってしまった。www.nycstreetfairs.com
「プエルトリカン・パレード」 いったいどうして、こんな小さな島からたくさんの移民がニューヨークにやってきたのであろうか。とにかく大勢の若者たちでごった返すパレードだった。ヒップ・ホップの原点はここにある、という印象を受けた。
「ゲイ・レズビアン・パレード」(Heritage of Pride
Parade) これは必見である。世の中には知らないことがたくさんあるものだ。完全に圧倒されてしまった。教会ごとのゲイ・レズビアン・グループから始まって、次に、怪しいクラブごとのパレードが延々とつづく。華やかにセクシーで、しかも気持ち悪いのだが、その異様な雰囲気に圧倒されてしまう。とにかく強烈だった。とくにメトロポリタン・ベアというゲイのクラブは、熊みたいに毛むくじゃらの男性ばかりが楽しそうに手をつないで行進していたことを思い出す。さらに後半のパレードでは、子供を連れたゲイ家族やレズ家族の行進、先生、弁護士、消防員、警察官などの行進が続いた。警察には、ゲイとレズビアンのブラスバンドまである。観衆たちは拍手を送って敬意を表していた。
「ゲイとレズビアンの研究所」(The Center for
Lesbian and Gay Studies) この研究所がニューヨーク市立大学の大学院のコースと一体になって設けられているということにまず驚いた。ここで哲学者ジュディス・バトラーの講演を聴いた。飾らない人だった。www.clags.org
「カーネギー・ホール」(Carnegie Hall) ステージの最高峰と呼ばれているわりには、音響効果はそれほどでもなかった。古く歴史があるホールだということだ。カトヤ・グリネヴァ(Katya Grineva)というロシア系の若手女性のピアノ・ソロを聴いた。
「イエローマン・グループ」(Yellowman Group) 日本から来た四人の即興演劇グループ。その即興劇をニューヨークでとても楽しんだ。観客の中から選ばれた私は、ステージに引上げられ、いっしょにパフォーマンスをさせられてしまった。なんだかよい経験になった。
「アポロ・シアター」 ハーレムにある劇場で、毎週水曜日は「アマチュア・ナイト」というイベントがある。素人喉自慢というよりも、各地方のプロ歌手やプロのエンターテイナーが、世界にはばたくために出場するコンテストである。単に歌がうまいだけでは通用しない。黒人エンターテイメントの層の厚さを知るためにも、必見の価値がある。聴衆は、黒人に次いで日本人が二番目に多い。白人の聴衆は日本人よりも少ないというのだから、文化の落差を知る上でも興味深い場所だ。
「ブルックリン・タバーナクル」 (The Brooklyn
Tabernacle) 一度に2,500人を収容するメガ教会で、一日に四回のサービスがある。つまりここは、1万人の信者を抱える教会なのだ。ゴスペルを歌う聖歌隊はクールでパワフル、しかも音楽的に複雑でよく練習を重ねているようだ。ソロのシンガーはプロを採用しているらしい。その驚異的なコンサートに参加して、私もみんなと歌いまくった。感動を共有した。歌いながら崇高な境地に達していくようだったが、歌い終わるととても疲れて、寄付金を集める時間となった。疲れを癒すサウンドのなかで、寄付金が集められていった。いずれにせよ、2,500人で洗練されたゴスペル・ソングを歌うという経験は、なかなか感動的なものである。なおこの教会のCDも売り出されているが、それを聴くかぎりではまったく感動は伝わってこない。やはりゴスペルは、みんなで歌うにかぎる。見学はフリー。www.brooklntabernacle.org
「マーサー・ストリート・ブックス」(206 Mercer St.) ごちゃごちゃしていて、それでいて知的で芸術的な古本屋。これこそ古本屋の理想といえる場所だ。古いジャズがかかっていて、CDではなくLPがたくさん売られていた。ニューヨーク大学のスポーツ・センターの向かいにある。
「ブック・アーク」 洗練された古本屋。アッパー・ウェストにある。揃えてある本がなかなかこだわりがあって、訪れる価値があると思う。たまたま見つけた本屋だったが、その内装インテリアをみるだけで、心がしっとりしてしまう。www.bookark.com
「ラビリンス・ブックストア」 マリオ・リッツォ教授が教えてくれたマンハッタンのアカデミックな本屋。ここがベストだと言われた。倉庫のようなところで、いろいろ情報を得るのに役立った。古本もある。コロンビア大学の近く。www.labyrinthbooks.com
「サンライズの一階にある本屋」 左翼系の新刊本が取り揃えてある。批判理論や文芸批評、フランス哲学や建築論、都市論、デザイン関係、小説など、アメリカのポスト・モダン文化を象徴するような品そろえだ。この本屋にはとてもお世話になった。
「ブルックリン植物園」 ここで毎年春に、日本の桜祭りが催される。桜が満開になるころに、太鼓、踊り、三味線、舞踏などの催し物があった。日本庭園もあって、全体的にデザインがすぐれていて、様々な景観を楽しむことができた。
「プロスペクト・パーク」 ブルックリンにある広大な公園。しっとりしていて、木々の匂いがここちよい。ここでも僧太鼓の演奏があった。